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千葉地方裁判所 昭和44年(わ)87号 判決 1973年1月29日

一、事務所所在地

千葉県館山市北条一、六八六番地

名称

千葉砂岩開発株式会社

右代表者代表取締役

石井輝久

二、本籍

千葉県館山市北条一、六八六番地

住居

右同所

会社役員

石井博

大正一五年一〇月一日生

右の者等に対する各法人税法違反被告事件を審理して、次のように判決する。

主文

被告会社を罰金四〇〇万円に、

被告人石井博を懲役六月に

各処する。

但し、被告人石井博に対しては、この裁判確定の日

から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人等の負担とする。

理由

一、犯罪事実

被告会社は千葉県館山市北条一、六八六番地に本店を置き、土木建築資材の販売及び運搬、岩石の採掘等を目的とする株式会社であり、被告人石井博は同社取締役でその業務全般を統轄しているものであるが、被告人石井は被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて被告会社の公表帳簿を作成せず、決算期には架空の数字を組んで決算書を作成するなどの不正手段により、

第一  昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は二〇、二八〇、〇〇〇円、これに対する法人税額は七、三二三、六〇〇円であるのに拘らず、昭和四一年二月二八日頃同市北条一、一六四番地館山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額は四六四、二〇〇円、これに対する法人税額は一四三、九〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度の正規法人税額との差額七、一七九、七〇〇円をほ脱し、

第二  昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は一五、〇八二、〇〇〇円、これに対する法人税額は五、〇六八、七〇〇円であるのに拘らず、昭和四二年二月二八日頃前記館山税務署において同税務署長に対し、その所得金額は二七五、四〇〇円、これに対する法人税額は七七、一〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度の正規法人税額との差額四、九九一、六〇〇円をほ脱し

たものである。

二、証拠の標目

判示事実全体に関する証拠

1千葉地方法務局館山支局登記官佐藤昭作成の被告会社登記簿謄本

2昭和四七年押第七七号(以下同号と略称する)の一法人税決定決議書綴一綴

3同号の二業務報告書二綴

4同号の三会長重要書類一綴

5第四回、第七回、第八回及び第九回各公判調書中、証人鈴木徳吉の供述記載部分

6鈴木徳吉の検察官に対する昭和四四年一月一三日付、同月一四日付及び同年二月一九日付各供述調書

7第一〇回及び第一一回各公判調書中、証人大山貞齢の供述記載部分及び同証人の当公判廷(第一九回)における供述

8要藤浩の検察官に対する供述調書

9第一二回公判調書中、証人醍醐岩男の供述記載部分

10大蔵事務官の石井輝久に対する質問てん末書

11石井輝久の検察官に対する供述調書

12大蔵事務官の被告人石井博に対する昭和四二年一〇月一二日付及び同四三年三月一四日付各質問てん末書

13被告人石井博の検察官に対する供述書

各勘定科目に関する証拠

(一)  昭和四〇年度分

1売上

イ伊勢富-大蔵事務官の(以下省略する)熊代進に対する質問てん末書並びに昭和四七年押第七七号(以下同号と略称する)の五仕入明細書(二枚)一綴及び同号の六請求書一冊

ロ金木興業-金木重孝の検察官に対する供述調書

ハ京葉資源開発-同号の七請求書控一袋及び同号の八仕切帳簿抜取一袋

ニ京葉臨海工業-大蔵事務官江部三男作成の銀行関係調査書類(以下銀行調査書類と略称する)の一の19及び一〇の2、株式会社千葉銀行館山支店長堀口徳治作成の被告会社商業手形元帳写証明書並びに同号の九領収書綴(当座口振込受領書)

ホ古久保建設-林広の上申書及び同号の一〇請求書領収書等一袋

へ大千葉建設-同号の一一頁掛帳一冊

ト館山建設業共同企業体-同号の六及び一二領収証控一冊

チ中央産業-鈴木孝子の上申書及び同号の一三買掛補助簿一綴

リ東亜港湾工業-中込米次郎の上申書並びに同号の一四及び一五請求書領収書等各一綴

ヌ館山ロープウエイ-同号の一六代金取立手形通帳一冊

ル藤原石材-大蔵事務官田中英雄作成の「藤原石材と千葉砂岩開発との取引について」と題する書面(以下田中書面と略称する)

ヲ松本商店-松本治男の回答書

2雑収入

イ預金利息-前記堀口徳治作成の千葉砂岩普通預金元帳写証明書

ロ金木興業-同号の六、一二及び一七領収書控一冊

ハさん橋使用料-第一二回公判調書中証人醍醐岩男の供述記載部分(以下醍醐証言という)、銀行調査書類の一並びに同号の二〇石代運賃精算書等一袋

ニ火薬代-醍醐証言及び岡田正二の回答書

ホ剰余金分配金-銀行調査書類の一

3仕入

<1>石代

イ伊勢富-同号の五

ロ石井商会-銀行調査書類の二五、千葉興業銀行館山支店長兼坂秀夫作成の大千葉建設当座勘定元帳写証明書

(以下兼坂証明書と略称する)及び同号の二〇

ハ河岡組-岡部寛に対する質問てん末書

ニ小宮吉次-銀行調査書類の二五、兼坂証明書並びに同号の四の一及び二請求書領収書等一袋

ホ玉木石材-同号の九の二

ヘ中央産業-鈴木孝子の上申書

ト藤原石材-田中書面、銀行調査書類の一、堀口証明書並びに同号の九の一及び二、同号の二七使用済約束手形一袋

チ寺本産業-同号の四の一請求書領収書等一袋、同号の九の一、同号の二二請求書等一袋、同号の二五領収書等一袋及び同号の二六当座小切手帳一綴

リ房総興産-玉木直に対する質問てん末書

ヌ満平利雄-同号の四の一、九の一、二二及び二六

ル吉本正夫-銀行調査書類の二五の25、同号の四の一、九の一、二二及び二六

<2>船賃

イ石井商会-銀行調査書類の二五、堀口証明書、兼坂証明書及び同号の二〇

ロ加藤兼吉-同号の四の一、九の二、二二、二五及び同号の二八売上仕入帳

ハ佐久間実-銀行調査書類の二五、館山信用金庫本店営業部長天野恒安作成の普通預金元帳写証明書(以下天野証明書と略称する)、同号の四の一、二二及び二六

ニ笹生忠次-同号の四の一

ホ笹生由太郎-同号の四の一、九の二及び二二

ヘ柴田喜一-同号の二九船賃精算書一袋

ト高石俊-銀行調査書類の二五、一の29及び33、兼坂証明書並びに同号の一九、二二及び二六

チ種田富美江-種田富美江に対する質問てん末書及び銀行調査書類

リ出口米吉-同号の四の一及び二、九の一及び二、二二並びに同号の三一メモ一袋

ヌ仲野武治-仲野武治に対する質問てん末書及び銀行調査書類

ル吉本正夫-同号の四の一、九の一、二二、二五及び二六

4運賃

イ大千葉建設-同号の三二水揚日報一綴及び同号の三三収入支出明細一袋

ロ錦織外二件-銀行調査書類の二五

5権利金-高梨よねに対する質問てん末書及び高梨金之助の回答書

6港湾使用料-醍醐証言及び平野真也の上申書

7火薬代-岡田正二の回答書

8修繕費

イ大千葉建設-銀行調査書類の一の二一

ロ宮崎製材所-同号の二五

ハ山野井鉄工所-山野井房一の上申書

9公租公課

イ印紙税-銀行調査書類の一

ロ市民税、町民税-前記江部三男作成の税金関係調査書類

10人件費

イ石井博-同号の三四昭和四〇年分所得税確定申告書

ロ鈴木徳吉-銀行調査書類及び前出証人鈴木徳吉の供述記載部分(以下鈴木証言という)

ハ醍醐岩男-銀行調査書類及び醍醐証言

11旅費-銀行調査書類の一及び二五並びに同号の九の一及び二五

12交際接待費

イかじや旅館-黒川コウの上申書及び銀行調査書類の二五の25

ロ高木酒店-高木敬介の回答書

ハ丸太商店-銀行調査書類の一及び二五並びに同号の九の二

ニ東亜港湾-銀行調査書類の一の二二

ホミカド外-同右の二五並びに同号の九の一、二五

ヘその他-被告人石井博の検察官に対する供述調書

13通信費

金谷・館山電話料-前記江部三男作成の電話料関係調査書類

14事務費

イ安房印刷-銀行調査書類の二五及び同号の九の一

ロムサシヤ-銀行調査書類の一及び二五

ハ東亜港湾工業-同号の二五

15賃借料

イ金谷事務所地代-銀行調査書類

ロ火薬庫賃借料(鈴木四郎右衛門払)-醍醐証言

16雑費

イ材料検査料-同号の九の一

ロ送金手数料-同右

ハ金谷出張所雑費-銀行調査書類の二五及び醍醐証言

ニ諸会費-銀行調査書類の一、同号の九の一、二二及び二五

ホ船具代、印鑑証明ほか、自動車借上料-銀行調査書類の一、一〇の2及び同号の九の一

17消耗品費(支払なしとして否認)

18事業税(未納法人事業税認定損)

19支払利息割引料

イ館山信用金庫本店-銀行調査書類の三六及び三七

ロ千葉銀行館山支店-同右の一〇

減価償却費-前記江部三男作成の機械装置関係調査書類

仮払事業税認定損(昭和四一年分事業税中間分仮払)

(二)  昭和四一年分

1売上

イ伊勢富-熊代進に対する質問てん末書及び同号の五

ロ石井商会-同号の三五請求書写一袋、同号の三六精算書請求書控一冊及び同号の三七精算書控一冊

ハ大木組-大木栄一の回答書

ニ奥村産業-奥村与一の回答書

ホ金谷石材-吉本普美子の上申書及び同号の四一仕切帳より抜取一葉

ヘ金港石材-加藤藤治の上申書

ト京葉資源開発-同号の七及び八

チ信和産業-渡辺二夫回答書

リ第一産業-持丸四郎の上申書

ヌ中央産業-鈴木孝子の上申書及び同号の一三

ル東亜港湾工業-中込米次郎の上申書、同号の一五及び同号の四四請求書領収書等(一七期分)

ヲ富田商会-富田正宏に対する質問てん末書

ワ松本商会-松本治男の回答書及び銀行調査書類の五三

2雑収入

イ預金利息-堀口証明書

ロ金木興業-金木重孝の検察官に対する供述調書

ハ金港石材-同号の四の一

ニさん橋使用料-銀行調査書類の一、醍醐証言及び同号の二〇、同号の四六計算書(一〇枚)一袋

ホ火薬代-岡田正二の回答書、醍醐証言及び同号の四六

ヘ剰余金分配金-銀行調査書類の一及び三四

3仕入

<1>石代

イ伊勢富-銀行調査書類の二五の27及び同号の四七売上明細書一綴

ロ石井商会-銀行調査書類の二五、兼坂証明書、同号の二〇及び二二、同号の四八領収書控一冊並びに五〇領収証控一冊

ハ岩井石材-渡辺篤の回答書

ニ奥村興業-奥村与一の回答書

ホ金港石材-加藤藤治の上申書

ヘ協和石材-尾浦智に対する質問てん末書

ト中央産業-鈴木孝子の上申書

チ寺本産業-寺本高男の上申書、堀口証明書、天野証明書、銀行調査書類一の33、34同二五の29、31ないし37同号の二二、二六、四六、四九売上台帳一冊

リ房総産業-玉木直に対する質問てん末書

ヌ満平利雄-銀行調査書類二五の28、29、31、32、34、37兼坂証明書、同号の一九総資産帳、同号の二二及び二六

ル吉本正夫-同号の二二及び四九

<2>船賃

イ石井商会-銀行調査書類の二五、天野証明書、同号の二〇、四八及び五〇

ロ加藤兼吉-銀行調査書類の一の32、34二五の30、31、32、34、37、38、39、41、42及び同号の一九、三六、三七

ハ佐久間実-佐久間実の上申書、銀行調査書類の一及び二五、堀口証明書、兼坂証明書並びに同号の二六

ニ笹生由太郎-笹生由太郎に対する質問てん末書、銀行調査書類の二五の27、29、30、31、32、34、37兼坂証明書及び同号の二二

ホ柴田喜一-銀行調査書類の二五、兼坂証明書同号の五一船賃精算書及び同号の三七

ヘ島埜義男-同号の二六

ト高石俊-銀行調査書類の二五及び兼坂証明書

チ高梨三之助-銀行調査書類の二五の38

リ種田富美江-銀行調査書類の二五の30、同号の三〇メモ、計算書、同号の三七

ヌ出口米吉-銀行調査書類の二五、同号の一九、二二、三一メモ、同号の五二手帳一冊、同号の五三ノート一冊

ル仲野武治-仲野武治に対する質問てん末書及び同号の三七

ヲ錦海運-吉田民典の回答書二通及び同号の二六

ワ宮田卯之助-宮田卯之助の回答書、銀行調査書類の二五及び同号の二二

カ吉本正夫-同号の四九売上台帳

4運賃-大千葉建設-同号の五四請求書八冊

5権利金

イ小島きよ-小島きよの上申書

ロ湊砂利工業所-高梨よねに対する質問てん末書及び高梨金之助の回答書

6港湾使用料-醍醐証言及び平野真也の上申書

7火薬代-岡田正二の回答書三通

8修繕費

イ山野井鉄工所-山野井房一の上申書

ロ田中木材-銀行調査書類の二五

9公租公課-前出税金関係調査書類

10人件費

イ石井博-同号の五七昭和四一年分所得税確定申告書

ロ鈴木徳吉-銀行調査書類及び鈴木証言(第七回)

ハ醍醐岩男-同右及び醍醐証言(第一二回)

ニ大山貞齢-同右及び鈴木証言(第七回)

11旅費-銀行調査書類の一及び二五

12交際接待費

イ高木商店-高木敬介の回答書

ロ丸太商店及びよし富ほか-銀行調査書類の二五

ハその他-被告人石井博の検察官に対する供述調書

13通信費

金谷電話料及び大千葉建設電話料-前出電話料関係調査書類

14事務費

安房印刷、ムサシヤ及び末吉印刷ほか-銀行調査書類の二五

15賃借料

イ金谷事務所地代-銀行調査書類

ロ火薬庫賃借料(鈴木四郎右衛門払)-醍醐証言

16雑費

イ金谷港浚渫費-吉田民典の回答書

ロ金谷出張所雑費-銀行調査書類及び醍醐証言

ハ安全協会費及び決算料-銀行調査書類の一

ニ手数料-松本治男の回答書並びに銀行調査書類の一、三六及び五三

ホ看板料-銀行調査書類の二五

ヘ取立料-銀行調査書類の二五、三六及び三七

17消耗品費(支出なしとして全額否認)

18事業税(未納法人事業税認定損)

19支払利息割引料

イ千葉銀行館山支店-銀行調査書類の一〇

ロ京葉資源開発-同右の一

20減価償却費-前出機械装置関係調査書類

21貸倒損(小宮吉次に対する貸付金回収不能)

鈴木千代に対する質問てん末書及び被告人石井博に対する昭和四三年三月一四日付質問てん末書

三、被告人石井博の累犯前科

被告人石井博は昭和三七年一〇月一日東京高等裁判所において(一)証人威迫・銃砲刀剣類等所持取締法違反罪により懲役一年に、(二)銃砲刀剣類等所持取締法違反罪により懲役六月に各処せられ、前者については昭和四〇年一二月七日、後者については同年六月七日それぞれ執行を受け終つたものである。

四、弁護人の主張に対する判断

弁護人は、被告会社の藤原石材、満平利雄、石井二郎及び金木重孝に対する貸金につき貸倒損の認定をしなかつたのは不当であると主張するので案ずるに、

(一)  藤原石材については、証人田中英雄の当公判廷における供述によれば、同証人が同社を調査した際には弁護人が主張するような金五〇万円の貸付金や削岩機一台の賃貸は認められなかつたというのであるからこれについて貸倒損の認定をしなかつたのは当然である。

(二)  満平利雄に対する金二五〇万円の貸金については、同人は昭和四七年五月二二日の第一六回公判において支払の見込がない旨証言しているが、他方証人江部三男の証言によれば、同証人が調査した昭和四一年一二月三一日当時満平は農協からの融資でトラツクを購入して営業活動を続けており貸倒れと認定するには時期尚早であつたというのである。

(三)  石井二郎に対する二〇〇万円ないし三〇〇万円の貸金についても、同人は昭和四七年六月二六日の第一八回公判においては、当分支払える見込はないと証言しているが、前顕江部証言によれば、同人は昭和四一年当時有限会社石井商会の代表者としてプロパンガスや石材等を販売し、会社として法人税を、個人として所得税をそれぞれ納付しており、支払不能という状態ではなかつたことが認められる。

(四)  金木重孝に対する約一〇〇万円の貸金については、同人の検察官に対する供述調書によれば、同人はこの借金の支払のために振出した約束手形を昭和四一年四月頃不渡にしたが、その頃被告人石井博と交渉して同人の経営する会社の営業状態が改善されたら支払うという約束の下に支払の猶予を得ていることが認められる。

しかして、被告会社においては本件事犯調査当時右各貸金につき債権放棄、債務免除等の措置をとつていなかつたのであるから貸倒損の認定をしなかつたのはいずれも相当である。

次に弁護人は、被告会社所有千葉県君津郡天羽町金谷所在の土地につき減価償却しなかつたのは不当であると主張するので、この点について考えてみるに、元来土地はその性質上減価償却すべき資産ではなく、例外的に当該土地が天変地異等の自然的災害により荒廃滅失したとか、人為的加工により変容してその価値が取得当時の価格より著しく滅損している場合において僅かに減価償却の対象となるものと解されるところ、前顕部証言によれば、同証人が昭和四三年五月二三日頃右土地を視察した当時地上の砂岩を悉皆採掘し尽した後においても本件土地はその位置、環境等から見て十分利用価値のあることが認められるのみならず被告会社においては掘採による砂岩の減少につき損失経理を行なつていなかつたのであるから減価償却の対象としなかつたことは決して不当とはいえない。

総じて弁護人は国税当局は被告会社の収入面のみを把握し、支出面の調査が不十分であると非難するけれども国税当局の調査能力にも自ら限界があることは認めねばならず仮令支出面の調査に欠けるところがあつたとしても、その責任は挙げてことさらに会計帳簿の整備をしなかつた被告人石井博に帰せらるべきであつて当局の片手落を責めるのは失当というべきである。

五、法律の適用

被告人石井博の判示所為はいずれも法人税法一五九条に該当するので所定刑中懲役刑を選択し、同被告人には判示前科があるので刑法五六条一項五七条により累犯加重をし、右二罪は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文一〇条により犯情重いと認める判示第一の罪の刑に併合加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処するが、諸般の情状を斟酌し同法二五条一項二号を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。次に被告会社の判示所為は法人税法一六四条一項一五九条に該当するところ、右二罪は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額以下において被告会社を罰金四〇〇万円に処し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文によりその全部を被告人等に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

検察官 杉原弘泰 関与

(裁判官 鍬田日出夫)

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